結論: オワハラは企業側にとってもリスク

オワハラというと、学生が一方的に不利な立場に置かれる問題のように見えます。ですが実際には、内定と引き換えに就職活動の終了を強要する行為は、厚生労働省が定める指針によって明確に「行わないこと」とされている行為です。企業側にとっても、こうした行為を続けることは無視できないリスクになります。

オワハラを受けている側が委縮する必要はありません。ルールの上では、無理な引き止めをしている企業の方が分の悪い立場にいます。

厚生労働省の指針が定める禁止事項

根拠になっているのは、若者雇用促進法に基づいて厚生労働省が告示している「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」(平成27年厚生労働省告示第406号)です。この指針の「事業主等が青少年の募集及び採用に当たって講ずべき措置」の中に、次の記述があります。

  • 採用内定・採用内々定を行うことと引き換えに、他の事業主に対する就職活動を取りやめるよう強要すること等、青少年の職業選択の自由を妨げる行為、または青少年の意思に反して就職活動の終了を強要する行為は、公平かつ公正な就職機会の提供の観点から行わないこと
  • 労働契約が成立したと認められる採用内定者に対し、自由な意思決定を妨げるような内定辞退の勧奨は、違法な権利侵害に当たるおそれがあることから行わないこと

つまり「他社を辞退させる」「意思に反して就活をやめさせる」という行為そのものが、行政の指針レベルで名指しで禁止されているということです。これは学生側の思い込みではなく、公的な文書に書かれている基準です。

指針違反が企業に跳ね返る理由

この指針は若者雇用促進法の枠組みの中に位置づけられており、厚生労働省のページでは、都道府県労働局やハローワークが事業主に対して指導・助言を行う仕組みが説明されています。指針に反する採用活動を続ける企業は、行政からの指導対象になり得るという構造です。

採用の評判にも直結する

行政指導の対象になるかどうかにかかわらず、オワハラ的な対応をした企業の情報は、口コミサイトやSNS、大学のキャリアセンター経由で翌年以降の学生にも伝わりやすくなっています。新卒採用は毎年繰り返す活動であるため、一時的に内定辞退を1件防いだとしても、翌年以降の応募者数や質を下げてしまっては割に合いません。

「強要」に見える言動は特に危うい

指針が問題視しているのは、選考の過程で志望度を確認すること自体ではなく、「他社を辞退させる」「就活の終了を強要する」という結果を求める言動です。担当者の熱意のつもりでも、繰り返しの電話や長時間の面談で退路を塞ぐような対応になっていれば、指針が想定する禁止行為に近づいてしまいます。

就活生がこの知識をどう使うか

強い引き止めに遭ったとき、「自分がわがままなのでは」と感じてしまう人は少なくありません。しかし指針の存在を知っておくと、少なくとも「この対応はルールから外れている」と冷静に判断する材料になります。

  • 強要と感じる言動があった場合は、日時とやり取りの内容を記録しておく
  • 大学のキャリアセンターに早めに相談し、間に入ってもらう
  • 行き過ぎた対応が続く場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーへの相談も選択肢になる

企業側にもリスクがあるという構造を理解しておくことは、オワハラに直面したときに必要以上に自分を責めないための、ひとつの支えになります。

出典